雨の日は、先生と
目的を失って、それでもなんとなく学校に行く。
家にいても、悲しいことを思い出すばかりだから。
それに、学校にいれば。
ふとした拍子にふっと先生が現れるような、そんな気がしていたから―――
「おはよ。」
後ろから掛けられた声に驚いて、声を上げそうになる。
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは新野君だった。
「なんだよ、そんなにびっくりすることないじゃん。」
先生のことを考えていたから。
そんなこと言えない―――
「あ、ごめんなさい。ちょっと……ぼうっとしてて。」
「ううん。驚かせてごめん。一緒に行こ!」
にこっと笑って彼が言う。
私も、ぎこちなく笑い返してみた。
いつか私も、新野君のように、自然に人と関わることができるようになるのかな。
無理しなくても、本当の自分を人に晒すことができるのかな。
先生の隣にいるときみたいに、笑ったり、泣いたり。
「笹森、今日は小論指導?」
「あ、ううん。……勉強しにいくだけ。」
「そっか、偉いな!俺なんか、小論指導なかったら絶対来ないって。」
そうだよね、と思う。
家で勉強するよりも、学校に来る方が効率よく勉強できる人も確かにいるけれど。
何もないのに学校に来るなんて、普通じゃない。
「あ、俺さ、小論指導午前中だけなんだ。で……、午後からよかったら、」
なんだか歯切れの悪い新野君に気付いて、私は不思議な気持ちになる。
「一緒に勉強しないか?」
大声で尋ねられて、私は一瞬返答に詰まる。
そんなふうに言われても、私は大学を受験するわけでもないし……。
「なっ、いいだろ?」
「あ、う、うん。」
「よっしゃ!教室でいい?」
「いいよ。」
嬉しそうにする新野君に、私は困惑していた。
新野君なら、きっと一緒に勉強する友達なんてたくさんいるだろうに。
どうして、昨日初めて話した私なんかと。
「じゃあな!俺、視聴覚室だから。」
「あ、うん。」
「また後でなっ!」
「……頑張ってね。」
「おう!」
ニカッと笑う新野君は、太陽みたいだった。
太陽みたいに明るくて、何も隠し事がなくて。
反対に私は月だ。
照らされて初めて光る月。
いつだって闇の部分を持っていて。
あまりに明るい太陽に、いつも目が眩んでしまう。
天野先生、先生も月だね。
いつも待ち合わせていた公園で、青白い月の光に照らされた先生の横顔。
透明になって、消えてしまいそうな先生を、私は結局繋ぎ止めてはおけなかったんだ―――
家にいても、悲しいことを思い出すばかりだから。
それに、学校にいれば。
ふとした拍子にふっと先生が現れるような、そんな気がしていたから―――
「おはよ。」
後ろから掛けられた声に驚いて、声を上げそうになる。
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは新野君だった。
「なんだよ、そんなにびっくりすることないじゃん。」
先生のことを考えていたから。
そんなこと言えない―――
「あ、ごめんなさい。ちょっと……ぼうっとしてて。」
「ううん。驚かせてごめん。一緒に行こ!」
にこっと笑って彼が言う。
私も、ぎこちなく笑い返してみた。
いつか私も、新野君のように、自然に人と関わることができるようになるのかな。
無理しなくても、本当の自分を人に晒すことができるのかな。
先生の隣にいるときみたいに、笑ったり、泣いたり。
「笹森、今日は小論指導?」
「あ、ううん。……勉強しにいくだけ。」
「そっか、偉いな!俺なんか、小論指導なかったら絶対来ないって。」
そうだよね、と思う。
家で勉強するよりも、学校に来る方が効率よく勉強できる人も確かにいるけれど。
何もないのに学校に来るなんて、普通じゃない。
「あ、俺さ、小論指導午前中だけなんだ。で……、午後からよかったら、」
なんだか歯切れの悪い新野君に気付いて、私は不思議な気持ちになる。
「一緒に勉強しないか?」
大声で尋ねられて、私は一瞬返答に詰まる。
そんなふうに言われても、私は大学を受験するわけでもないし……。
「なっ、いいだろ?」
「あ、う、うん。」
「よっしゃ!教室でいい?」
「いいよ。」
嬉しそうにする新野君に、私は困惑していた。
新野君なら、きっと一緒に勉強する友達なんてたくさんいるだろうに。
どうして、昨日初めて話した私なんかと。
「じゃあな!俺、視聴覚室だから。」
「あ、うん。」
「また後でなっ!」
「……頑張ってね。」
「おう!」
ニカッと笑う新野君は、太陽みたいだった。
太陽みたいに明るくて、何も隠し事がなくて。
反対に私は月だ。
照らされて初めて光る月。
いつだって闇の部分を持っていて。
あまりに明るい太陽に、いつも目が眩んでしまう。
天野先生、先生も月だね。
いつも待ち合わせていた公園で、青白い月の光に照らされた先生の横顔。
透明になって、消えてしまいそうな先生を、私は結局繋ぎ止めてはおけなかったんだ―――