愛というキモチのカタチ。
横断歩道の手前でようやくその細い腕を捕まえることが出来た。


「このは!話を聞けって!!」


腕を振りほどいて逃げようとする小さな身体をぎゅうっと抱きしめて拘束すると、諦めたのか急に力が抜けた。


「……何で?アタシのことなんかほっとけばいいじゃん。
この前の仕返し?…あ、コレでおあいこだね。」


急かすようにそう言うとこのはは俯いたまま身体を捩った。


慣れないことをするとロクなことがない。


よーくわかった。



「お前、勘違いしてるだろ。
彼女はそんなんじゃないって。ウチの課の」

「そんなこと、どうでもいい。
彬ちゃんが何をしてたのかはわかってるから。」

…そう。

彬ちゃんがあの人を抱きしめていたってことは間違いじゃないから。


「…帰る。」



腕を振りほどいてキッと彬を睨みつけて。



何も言わない彬をそこに置いたまま、このはは家路についた。

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