曖昧な関係。
10
放課後、いつものように葵と二人で帰っていた。
明日から中間試験が始まる。
突然、いつもの日常は非日常に変わる。
その日は、雨が降っていた。
場所はある公園の前。
「ねぇ、北蓮高校(ほくれんこうこう)弓道部の神崎葵ちゃん?」
二人して振り返ると、そこには傘をさした他校の男。
何か見た事が有るような、無いような。
「そうですけど。」
「僕、西華学園(せいかがくえん)の逢沢柊都(あいざわしゅうと)。
話があるんだけど、時間作ってもらってもいい?」
その男は、ニコッと笑う。
嘘くせぇ笑顔。
「4日後の放課後でもいいですか?
明日から中間試験なんで。」
「うん、いーよ。
じゃあ、4日後にこの公園で。」
去り際に睨まれたのは多分、気のせいじゃない。
西華学園
この辺では、一番の進学校。
そして、弓道部は全国レベルで今年もインハイに出場している。
で、そこの元部長のはず。
つーか、普通に顔整ってたし。
モテそうな感じ。
葵に告白だろうか?
文武両道、眉目秀麗。
オレ、勝てねーじゃん‥。
もしかして、何もしないで失恋決定?
「蒼?
早く帰ろ。
肩、濡れてるよ?」
ボーッとしていたらしい。
傘からはみ出た肩が濡れてる。
「え?
あぁ、悪い。
早く行こーぜ。」
葵は全然、告白だなんて思ってなさそうだし。
明日から試験なのに、集中出来ねー。
ポツポツとオレの心にも、雨が降る。
雨が染みた心は重くなる。