殺し続ける
流木の独特な形が、男の目を突き刺した。
血がほとばしり、男の下にいた少女の顔に飛び散った。
少女の目は、さらに丸く大きく開かれる。
「ぐっ…」
男は突然のことに叫びもしない。まだ痛みも感じていないのかもしれないな。

少女の服で見えなかった部分の肌が見える。
腕や足には火傷、痣、タバコを押しつけられたような痕。

痛々しい…


…正直気持ち悪い少女の体。

俺は男の胸ぐらをつかみ、少女の上からどかせた。
壁にダンッッと男の背中を押し当てた。反動で後頭部が壁で強打される。
男の目が、俺を見つめる。
「な…何なんだよ!!お前誰だよ」
俺は答えられない。
答えなんて無いのだから。
俺は少女にとって何者でもない。
誰だと聞かれて、名前を名乗るのも、何かズレているような気がする。
そんなことは、どうだって良いんだ。
少女の痛みを、同じ痛みを味わえ…

男のポケットにはタイターとタバコが入っていた。
常に入れているようで、タバコの箱は醜く潰れている。
まず…火傷か。
俺は男の胸ぐらをつかんだまま、ライターで男のまつげを焼いた。次に
はなの下にあったホクロを集中的に焼いた。口を開けさせ中に光を灯した。
そのうちに、男の表情は虚ろになっていった。
力もなくなり、犯行もしなくなった。
腰も抜けてしまっている男を引きずって台所まで行き、包丁を拝借した。男の表情が一瞬で蘇る。呻き声をあげた。
これが断末魔の叫びというやつなのだろうか?
男の急所を切り落としたのだ。少女を汚したこの男が憎くて憎くてたまらない。
男は気絶してしまった。

…こんなヤツ
生きていて
何になる?

俺は、男の首に刃をあてた。
硬くて、切り落とせない。
やっぱ包丁じゃぁ無理か…


「お父さん!!」
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