逃亡
何度も浮気した史也。
二泊三日のこの時間を、嘆くだけに費やしたくない。
新しいスマホで不動産を検索する。
今のアパートよりもグレードアップを望むのは私の意地。
史也とも、蓉子よりも遠くて会社に近い方がいい。
季節外れの不動産は結構な穴場だった。
ーーーけど。
敷金の壁が立ちはだかる。
「家賃も其なりの所は、敷金もそれなり何だよね…」
「この辺りはお薦めだよ。駅に近いわりに安いしね。
セキュリティもしっかりして、お得なんだけどな。」
不動産のおじさんは眼鏡を下げて、私の顔を覗き込んだ。
「う~ん…」
日当たりも良くて申し分無いんだけど。
どうしよう。
「おじさーん!!」
店に飛び込んで来たのはーーー。