逃亡
「……私の方こそ…忙しいんでしょ?私、部屋で待ってるよ?」
「家じゃ、話しても伝わりそうにないって言うか、真那は興味無さそうだし。」
「……?」
首を傾げる私に屋嘉部さんは嬉しそうに目を細めた。
連れられて来た部屋は、ヘアサロンには見えない豪華な個室だった。
「准、さっき言ってた娘?」
鏡の前に座って、寛いでいるその人と目が合った。
「?」
頬図えをしてじっと私を見ているその人に、屋嘉部さんは笑った。
「ハヤトさん、言ったでしょ?真那は興味無いって。」
「ホントだ。俺って大したこと無いんだなー。自信なくすなー」
「大したことありますよー」
やだなーと言いながら、屋嘉部さんは私を部屋の角にある豪華なソファに座らせた。
「お陰で、真那、店長に追い出されそうになったし。」
「え?マジで!?」
大きく目を見開いたハヤトさんは、鏡越しに「ワルいな」と両手を合わせて謝った。
「仕方ないですよー、緊急事態何ですからー」
屋嘉部さんはニヤリと笑って、ハヤトさんにケープをかけた。
「~~っ!?」
照れるハヤトさん 。