逃亡
ー2
彼のアパートの駐車場に車を確認。
車の運転ばかりだと旅行を楽しめないからと、車で行くのをわざわざ止めて貰った今回の旅行。
私なりに彼を気づかったつもりだった。
古いアパートの階段を静に上がる。
「(驚くかな)」
ポケットから合鍵を出してそっと回して中の様子を伺った。
1LDKのアパート。
玄関の向こうはリビング…
「……。」
人間って驚くと息を忘れるって言うけど、ホントだったんだ。
目の前の光景が信じられなくて、身動きさえ出来なかった。
抱き合う二人。
「ま、な…?」
そう、私の名を呼んだのは、間違いない、今日の旅行を良かったねと喜んでくれた『親友』蓉子(ようこ)。
「真那っ」
彼が私を捕まえようと伸ばした腕から、合鍵を投げつけて逃げ出した。