逃亡
涙がでないのは、それまでで出尽くしたからだと思う。
最初の浮気に気付いたのは、付き合って3ヶ月も立たない頃ーーもしかしたら、それまでもしていたかもしれない。
やたらと帰りが遅くなって、残業って言う理由だけでは納得いかなくなって来て……偶々蓉子とお茶しに行ったカフェで見てしまった。
2回目は、相手から別れろと電話があった。
3回目は、私に覚えのないキスマークをつけていた。
『もう、無理……』
別れると言った私に、もう二度と浮気はしないと、部屋の合鍵を差し出した。
『合鍵なんて意味ない。』
『二度と浮気はしない。』
『信じられない。』
『見に来ればいい。』
『……。』
『確かめればいいーー信じてもらえるように頑張るから。』
『家に連れ込んでたんだ…』
『………次、浮気をしたら、その時は真那の言う通り、別れてもいい。』
『……。』
『無いから。』
自信たっぷりな物言いに、まだ好きな気持ちがあったから、その申し入れを受け入れた。