逃亡
『真那が、決めたようにすればいいんじゃない。』
『今度浮気したら、こっぴどく振ってやれば良いのよ。』
笑って背中を押してくれた蓉子。
蓉子も史也が好きだった?
いつから?
全然気づかなかった。
「ーーー笑える。」
こっぴどく振ってやるどころか、こっぴどく裏切られてたなんて。
適当な駅で降りて、周辺のビジネスホテルに身を寄せた。
途中、コンビニで買ったパンをかじりながら、夜明けを待った。
もしかしたら、蓉子が本命で、私の方が浮気だったのかもしれない。
誕生日の旅行も後ろめたさからだと思えば納得できる。
慣れない空間はどこか落ち着かなかったけれど、スマホの電源を入れる気にはなれなかった。
……もう、あの二人に関わりたくない。
傷つくのはもうたくさん。
正直な気持ちだった。