セカンドデビュー【完】
お城と桜と、赤い橋。
それらをバックに、少し若い時の母さんと、立花美香が笑っている写真。
二人ともポニーテールにしている。

「仲良しだったんだな」
嬉しそうに、幸せそうに、彼は写真を見ながら微笑んでいる。
「……掃除しようよ」


橘さんは、フォトフレームの埃をふき取って、元の場所に戻した。
愛しいひとを見る柔らかい笑みが、彼の口元に浮かんだ。

「掃除機かけといてやるから、琴音、お風呂場とトイレこすってきて」
「えー!!」
「もともと、お前の家でしょ。部屋が汚い男は出世できないぞ」

お風呂場の換気扇をつけて、浴槽をスポンジでこする。
(わあ、綺麗になる……)
ちゃんと掃除しないとダメだなあ、と思いつつ、男の一人暮らしだと、どうやって掃除したらいいのかがまずわからない。橘さんがここに住んでくれたらいいのに。ラクそう。
琴音ー、ちょっと来て、とリビングから呼ばれた。

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