セカンドデビュー【完】
記者会見前のバタバタした空気の中、オレは橋本プロデューサーに捕まった。

「さっきのはケンカじゃないよね」
「まさか。ただのお喋りですよ」

琴音と大場ユキトの雰囲気の悪さには気づいているようだ。

前の現場での様子を聞いて見ると、彼は眉をしかめた。

「挨拶したとかしないとか、そんなレベルだったんだよ」

弁当もメイクも別々の場所でするようになった。

「琴音くんが、ユキトを嫌っている感じだったな」

なんかあったんだろうか。

「NG出して撮影が止まったりすることぐらいはあるだろう。それでも、琴音くんは主人公のユキトくんを立てていたんだよ」

そんなある日。
些細なことで喧嘩になり、

「親の顔も知らないくせに!」

大場ユキトがそう言ったらしい。

当然大喧嘩になって、琴音が飛び蹴りを入れた。
撮影は一時中止になり、しぱらくは二人の共演はなかった。

「……どうしてそんなことに?」
「さあ……」

琴音が怒ったのはわかるが、周囲の人間には原因はわからなかったらしい。
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