セカンドデビュー【完】
「母にはもう話題になるものがありません。死んでるんですから」
「……」
「自宅にはまだ靴が残っています。捨てられなくて」
「倖太」
「わかりますか? 真夜中に誰かの足音がすれば『母が帰ってきた』と期待する気持ちが。テレビ局の廊下ですれ違うんじゃないかと期待する気持ちが」
誰にも言ってないけど、オレは知ってる。
この気持ちは、恋に近い。
マザコンでもなんでもいい、もう会えない母に恋をしている。
「……」
「自宅にはまだ靴が残っています。捨てられなくて」
「倖太」
「わかりますか? 真夜中に誰かの足音がすれば『母が帰ってきた』と期待する気持ちが。テレビ局の廊下ですれ違うんじゃないかと期待する気持ちが」
誰にも言ってないけど、オレは知ってる。
この気持ちは、恋に近い。
マザコンでもなんでもいい、もう会えない母に恋をしている。