セカンドデビュー【完】
夕方からホテルのバイトがある。
結婚式や宴会の配膳のバイト。時給がよくて拘束時間が短いから助かっている。

今日は婚礼がひとつだけだった。
テーブルを回って、ステーキやスープを運ぶ。他にも、ワインを注いだり、コーヒーを注いでまわったり、とても忙しい。

「はい、それでは、ここで歌を歌っていただきましょう……」

結婚式を盛り上げるために、新郎や新婦の友人が、カラオケで歌う。

……下手な歌。
でも、祝福する心がこもっていて、オレは、彼らが緊張でガチガチしながら歌うのを聴くのが好きだ。

オレの歌がいつか、こういう場で歌われれば幸せなことだと思う。
なんだかんだしているうちに、結婚式は終わり、オレは面接疲れとバイト疲れの足を引きずって、家に着いた。
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