セカンドデビュー【完】
「琴音。ひとつお願いがあるの」
「なに?」

「もうあの子と会わないで」
「……いっとくけど、マネージャーをつけたのは母さんだよ」

「なんなら前のマネージャーを呼び戻してもいいわ。とにかくあの子はダメ……。あの子をうちに入れたのが間違いだった」
「ちょっと母さん。確認するけど、母さんはあの事件には無関係なんだろ? 一緒にご飯食べてただけなんだろ」
「そうよ」
「なら、倖太を目の敵にするのはおかしいよ。彼は彼で犯人探しをしてるだけだ。僕は倖太を助けてあげたい」

違うの、と母の唇が動いた。
声に出せなかった母の目が泳いだ。



何が違うのか確認するのが怖い。






「母さん、何か隠してない? それともお芝居?」


母は何も答えず、部屋を出て行った。

フォトフレームのガラスのかけらが、床の上できらめいた。
母と立花美香の笑顔を彩るように。
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