セカンドデビュー【完】
明け方までいいようにされていた、気だるい体を引きずって浴場へ向かった。
汚れを洗い流してしまいたい……。

着替えて大広間へ向かう。
朝食の用意をしていた仲居が、おはようございますと声をかけた。

「よく眠れましたか?」
「……ええ、ぐっすりです」
「お連れ様は以前もいらしてくれたんですよ」

そんなこと、どうでもいい。
 
会釈をして先に朝食を済ます。
「おはよう」
「……」
「よく眠れた? 昨日はずいぶん楽しんでたみたいだったけど」

味噌汁をぶっかけてやりたい気持ちになったが、旅館でそんなことはできない。
チェックインを済ませて車に乗り込む。
自宅までほとんど口を開かなかった松本が、帰り際に、「またしようよ。琴音には黙っておいてあげるから」と囁いた。

< 386 / 592 >

この作品をシェア

pagetop