セカンドデビュー【完】
「3年前、バンドやってただろう? 歌唱力もあったし、立花美香の息子だ、親子で出すことで、七海晶のふだんの姿を演じられると僕は思った」
「……」
「美香さんが反対したんだ」
「……」
「七海晶は正義感が強く、それでいて冷静なキャラクターだ。歌が歌えても、おっとりしている君には無理だと。そんなわけで主役選びが難航してね。そうこうしているうちに、
美香さんが亡くなられた。映画化の話も流れてしまったんだ」



話を聞く限りでは、アヤさんに動機らしきものは見つからなかった。
役の取り合いなんて、役者の世界ではよくあることだろうし、それが原因とは思えない。

現に、母が死んで、映画の話は流れてしまっている。

「なにか……、母のことで覚えていることはありませんか」
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