セカンドデビュー【完】
思い出した!
再デビューの話がつぶれた時の、レコード会社の人だ。
「……お久しぶりです」
「久しぶりだね。水原くんから連絡をもらった時は驚いたよ」
「……はあ」
「隣で、今日面接に来た全員の様子を見ていたんだよ。1分で決断できたのは君だけだ」
「……これも、何かのご縁ですね」
「何かじゃない。君が決断したことだ」
自分で決めたことなんだよ、と肩を叩かれた。
「君は子供の時に、一度デビューしているから……、今度は二回目のデビューということになる。水原琴音とうまくやる自信はあるかね」
「はい」
適当に答えてみる。
「以前、うちから出したかったんだが……お母さんのことは大変だったね。しかし、本当に苦労するのはこれからだよ」
母が無言で帰宅したあの日のことは忘れない。
忘れていない。
「……はい」
「付き人なんて、自分がやる仕事じゃないと思わずに。くさらずにな」