セカンドデビュー【完】
「美香が上京するのに、妻と大喧嘩になってね、それからは絶縁状態だった。結婚や出産もすべて週刊誌で知った」
「アイドルをやってた頃にも連絡は取らなかったんですか」
「事務所に問い合わせようと思えばできた。でも娘が知らせてこないなら、こっちから聞いてなんになる」

両親も娘も、あきれるほどに頑固だ。

「倖太がテレビに出始めた時は驚いた。高校生だった娘がいつの間にか母親になっていて、その子が芸能人やってるんだから」

お茶が出てきて、薄暗い部屋の電気をつける。

「水原さんの家はお隣ですが、お付き合いは」
「……アヤさんは美香に連れられて、家出したようなモンだ。アヤさんは実家には戻らないと言っているそうでね。挨拶ぐらいはするが、ほとんど付き合いはない」
「そうですか。アヤさんの子供も芸能界にいますがテレビでみたりは」
「……男の子なのに化粧品のCMに出ている子だろう」
「その子です。彼を連れて、アヤさんと美香さんが帰省したことはありませんか」
「……一度もないと思う。何故、そんなことを?」


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