セカンドデビュー【完】
「美香さんはどんな子供でしたか」

好きだったアイドルの過去を探るのは、良い気持ちはしない。
しかしこれも刑事の仕事だ。

「よくいる普通の田舎娘だったよ。都会に憧れて、夏休みに髪を染めて親とケンカするような、普通の子供だった」
「部活は演劇部でしたね」
「演劇部のくせに台詞を覚えるのが苦手で、夜中までブツブツ練習してた。そのくせニキビができるとか言って鏡ばかり見ていたよ。不細工がなにをしても変わらないのに」
「美香さんは可愛かったですよ。大ファンでした」
「刑事さんは優しいなあ」

埃っぽい部屋で、美香の父親は涙をこらえていた。
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