セカンドデビュー【完】
新しく、職場となった水原プロモーションに着くと、水原アヤが待っていた。

「美香が死んで、倖太くんはデビューを逃した。そのことは、みんな知ってるわ。狭い世界だもの。同じことを他の人から言われるかも知れないわよ。縁起が悪いって」
「……」
「美香の悪評と戦う勇気がある? 君は普通の二世タレントより、さらに、不利なのよ」
「戦う覚悟ならとっくに出来てます」

母を亡くした、その時からずっと。

「ずっとずっと、母の影と戦ってきました。今更怖くありません」

失うものは、なにもない。

「……琴音はもう来てるわ。もう一度聞くけど……」
「はい」
「琴音とやっていく気はある?」
「はい。無かったら、来てません」


それならいい、と水原アヤは「ここよ」と会議室のドアを開けた。
< 44 / 592 >

この作品をシェア

pagetop