セカンドデビュー【完】
傘を開いて歩き出す。

「……店の外までケンカしてる声聞こえてたぞ。何があった」
「あのラーメン屋がケンカ売ってきたんだ」

「あいつは、オレのファンだから……。お前のことが目障りだったんだろ」

いい奴なんだよ、と倖太は笑う。

「いつでも歌手なんて辞めちゃえって。オレがいつでもラーメン食わせてやるから、イヤになったらやめればいいって」
「……」
「ラーメンでも食って、寝て起きて、それでも歌いたくなかったら辞めればいいって。オレがへこんでる時はいつでもそう言うんだよあいつ」

立花美香の悪名を超えるほどの歌手になればいいって。
橘倖太はたった一人だけなんだから。

「あいつがいつでも辞めろって言ってくれるから、意地張ってこれた」
「……倖太は、彼のこと好きなの?」
「大好きだけど……、別にそういうイミじゃない」
「あのラーメン屋、君の事を」
「知ってる。何回も告られてる」

何回告白されても、恋愛対象とは見れなくて、断っている。
誰でもいいわけじゃないんだ。

「あいつ、僕が君の邪魔になるって」
「……そんなこと言わせれたのか」
「僕が倖太を好きになることは、罪なの?」
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