セカンドデビュー【完】
話せるんですか、と倖太が医者に付き添われながら中に入る。
ガラス越しに倖太の声が届く。

「ガラスのくつはどこですか」

母の顔は半分つぶれて、ゆがんでいた。
あんなに綺麗だったのに。

包帯の間から血走った目が、倖太を見つめている。

「おしえない」

唇の形で判った。

「教えないということは知っているんですね」

倖太の言葉をさえぎるように、甲高い笑い声が響いた。
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