セカンドデビュー【完】
しばらく泣いたら、気分が落ち着いてきた。

「顔、洗っておいで」

ジャケット着ておけば大丈夫、と倖太に連れられて最上階へ出向く。
予約してあった店は気取ったフレンチ。

夜景を見下ろせる席で向かい合う。




周りからみたらどうえるのかな。
男二人だから恋人には見えないか。


「……火葬の時、写真とか時計とか入れた?」
「入れてないよ。バタバタしてたし」
「そう。それならいい」

倖太の目に少し輝きが戻ってきた。
たんに、微笑んだだけなら、おそらく僕は気が付かなかった。

探しているのは、ガラスの靴。
いなくなった彼のシンデレラ。

……僕じゃない。

こんなに近くにいるのに、手をつなげないほど、遠い。
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