セカンドデビュー【完】
「琴音くんは、美香が産んだの」
耳を疑った。
「いまなんて」
「水原琴音は美香が産んだって言ったのよ」
そんな。
それは困る。
久しぶりに恋をしたのに、弟だって?
それに、弟と肉体関係を持っていることになる。
「……困ります」
「……そんなこといわれても、困るわ」
美香はどうにもならない事情で妊娠した。
周囲は中絶を勧めたが、産むと決めた。
「弟ができたら嬉しい? そう聞いた時に、君は嬉しいと言ったわ。だから美香は出産に踏み切った」
中絶なんてできない、古風なところがあった美香は一度決めたら意見を曲げることはなかった。
「家には君がいたし、父親が誰かわからない子供を、美香の旦那さんは受け入れなかった。だからアヤが引き取った」
「……」
「美香はユニットとしての仕事にはこだわりはなかったし、渡米して修行するつもりだった。美香を引き止める口実が欲しかったのよ。子供がいたらいくら美香でも日本を離れられない」
「じゃあ、本当に……琴音は母さんが」
「産んだのは美香よ。私が取り上げたんだから。君もそばにいたのよ」
「小さかったから覚えてないかもね」
全く覚えていない。
「琴音くんを引き取った後、アヤは何回か整形して服も髪型も揃えて、外見を美香に近づけたわ。琴音くんが似てないと世間に思われないように」
「そんな」
「彼女たちの両親が見たら、娘の子供じゃないとバレる。だから二人は両親さえ捨てた。それきり津軽には帰ってこなかった」
耳を疑った。
「いまなんて」
「水原琴音は美香が産んだって言ったのよ」
そんな。
それは困る。
久しぶりに恋をしたのに、弟だって?
それに、弟と肉体関係を持っていることになる。
「……困ります」
「……そんなこといわれても、困るわ」
美香はどうにもならない事情で妊娠した。
周囲は中絶を勧めたが、産むと決めた。
「弟ができたら嬉しい? そう聞いた時に、君は嬉しいと言ったわ。だから美香は出産に踏み切った」
中絶なんてできない、古風なところがあった美香は一度決めたら意見を曲げることはなかった。
「家には君がいたし、父親が誰かわからない子供を、美香の旦那さんは受け入れなかった。だからアヤが引き取った」
「……」
「美香はユニットとしての仕事にはこだわりはなかったし、渡米して修行するつもりだった。美香を引き止める口実が欲しかったのよ。子供がいたらいくら美香でも日本を離れられない」
「じゃあ、本当に……琴音は母さんが」
「産んだのは美香よ。私が取り上げたんだから。君もそばにいたのよ」
「小さかったから覚えてないかもね」
全く覚えていない。
「琴音くんを引き取った後、アヤは何回か整形して服も髪型も揃えて、外見を美香に近づけたわ。琴音くんが似てないと世間に思われないように」
「そんな」
「彼女たちの両親が見たら、娘の子供じゃないとバレる。だから二人は両親さえ捨てた。それきり津軽には帰ってこなかった」