セカンドデビュー【完】
5番目の駅で降りて、歩いて5分。
細い道の奥に母の実家はあった。
インターホンを鳴らしても反応がない。
ごめんください、と玄関を叩いた。
「どちら様だ」
「あの……。立花美香さんの息子です。倖太といいます」
「……こないだテレビで見たな」
「……お父さん、ですか」
「んだ」
目の前の初老の男性が、母の父親なのか。
「寒かったべ。中さ入れ」
散らかった居間に通される。
暖房が効いた部屋にこたつが置いてある。
すすめられるまま、こたつに足を入れると、中から三毛猫が這い出してきた。
その猫は一瞥すると冷蔵庫の上に飛び乗った。
「お茶飲むか」
「あ、ありがとうございます」
台所からガサガサとクッキーを持ってきて、目の前に出される。
「……鏡原さんていう刑事さんが来た」
「鏡原さんには良くしてもらっています」
「美香のファンだって言ってたな」
初対面の祖父と話すことは、やはり母の話題しかない。
「美香は売れてからも、一度も帰ってこなかった。うちには」
「……そうですか」
「お前のことはテレビで知っていたよ」
「母が結婚した時は?」
「呼ばれたが、母さんが意地を張って行かなかった」
本当は後悔しているんだろう。
祖父は鼻をすすった。
「2階見るか」
細い道の奥に母の実家はあった。
インターホンを鳴らしても反応がない。
ごめんください、と玄関を叩いた。
「どちら様だ」
「あの……。立花美香さんの息子です。倖太といいます」
「……こないだテレビで見たな」
「……お父さん、ですか」
「んだ」
目の前の初老の男性が、母の父親なのか。
「寒かったべ。中さ入れ」
散らかった居間に通される。
暖房が効いた部屋にこたつが置いてある。
すすめられるまま、こたつに足を入れると、中から三毛猫が這い出してきた。
その猫は一瞥すると冷蔵庫の上に飛び乗った。
「お茶飲むか」
「あ、ありがとうございます」
台所からガサガサとクッキーを持ってきて、目の前に出される。
「……鏡原さんていう刑事さんが来た」
「鏡原さんには良くしてもらっています」
「美香のファンだって言ってたな」
初対面の祖父と話すことは、やはり母の話題しかない。
「美香は売れてからも、一度も帰ってこなかった。うちには」
「……そうですか」
「お前のことはテレビで知っていたよ」
「母が結婚した時は?」
「呼ばれたが、母さんが意地を張って行かなかった」
本当は後悔しているんだろう。
祖父は鼻をすすった。
「2階見るか」