セカンドデビュー【完】
大晦日の日、もし来れるならおいでとメールをして、家の掃除をした。
一人きりの暮らしでも新年は新年だ。
窓を拭いて、障子を貼りなおす。
仏壇もくなまく掃除をして花を飾った。

写真ではいつも優しく微笑んでくれている。

(琴音のことを話せなかったんだね)

事情が、あったんだ。
それなら、仕方ない。
あの子はオレが守る。

琴音からメールの返信があり、夕食前に家にくることになった。
年越し蕎麦の用意をしなくては。

おせちの食材もすでに用意をしてある。
あとは重箱に詰めるだけだ。

自宅でだれかと過ごす大晦日はひさしぶりだ。
高校のときはライブからカウントダウンの流れだったり、クラスメートと街で騒いでいたりした。

あけましておめでとうを繰り返すテレビを消して。
一人きりの正月がいやで、誰かしら集めて、遊んで。


あの頃のオレは、今より楽しそうに歌っていた。

来年のオレは笑っているんだろうか。


「……さっ、掃除掃除」


一緒のベッドではもう寝れない。ふとんももう出してある。
体を重ねることだけが愛情表現じゃない。
< 488 / 592 >

この作品をシェア

pagetop