セカンドデビュー【完】
倖太はガラスの靴を探していた。
母は「見つけられない」と言った。

普通に探しても見つからない場所。

遺骨を納めた納骨室は人の手で開けることができた。
立花美香の持ち物を墓に納める。
親友なら、とても自然だ。
たとえば、女物のバッグなら、十分入るだろう。

石材店に電話で確認する。

「遺品を納めるには納骨する部分を開ける必要があります。墓のデザインにもよりますが、ひとりでも開けられますよ」

「例えばどんなものを納めるんですか」

「火葬で燃やせない材質のものですね。メガネや貴金属など、思い出のある品を納める方が多いですね」

「ガラス製品はどうですか」

「多いですね。愛用のグラスですとか」

「手順としては?」

「やはり墓を開けることになりますから、お経を上げてもらいます。その後、私どもが墓石をずらして、施主様が品物を納めます。日本は雨が多いですから希望があれば防水シール剤で密封します」

お礼を言って電話を切った。
寺に戻り、確認をする。
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