セカンドデビュー【完】
ちゃんと話せないまま、正月は過ぎ、映画のキャストが集められた。
新しい台本を渡される。まだ決まっていない役も何人かいるらしく製作発表はまだ来月の話らしい。
主要キャストが集められて、一番先に名前が呼ばれる。
「主人公七海晶役の、水原琴音さんです」
「よろしくお願いします」
拍手が沸き起こる。
この僕が……主人公。
朝の鬱屈した気持ちは吹き飛んで、ようやく実感が沸いてきた。
映画の主役なんだ。
自然に笑みがこぼれる。
遠くから倖太が見ている。彼も嬉しそうだ。
主人公の七海晶は、表向きは歌手、裏では暗殺者という難しい役だ。
小さな正義より、大きな善に従う。それが彼の生き方だ。
金や権力で守られた犯罪者や、人体実験、人身売買など、日本で表立って報道されない事件を解決かる組織に属している。
七海晶は大きな善のために、暗殺者になった。
この映画では、薬品の開発のため大勢の人間を殺す製薬会社を滅ぼす戦いが描かれる。
美しいダークヒーロー。
それが七海晶。
ターゲットは政治家の父と、新薬を開発した、実の兄。
『大きな善に従う』という七海晶の台詞が耳に痛い。
僕は兄を殺さないといけないのか。
芝居とはいえ辛いな。
「主役は君だ。降りるなんて言わないでくれよ」
「はい。精一杯やらせていただきます」
衣装合わせや台本読みなどスケジュールが決まっていく。
記者会見もある。
そんな中、鏡原と玉木が現れた。
「車の件ですが、確かに届けは出てました。白い車の方は、売りに出した記憶はありませんか」
「さあ……。母の車でしたから。帰ってもらえませんか、仕事中なんです」
「そうですね。もうひとついいですか」
「はい? なんでしょう」
「アヤさんが亡くなる前のお話を聞きたいんですが、水原一雄さんはどちらに?」
「父方の実家に帰っているはずですが」
連絡先を伝えると二人は帰っていった。
雪雲が胸の中に広がる。
主役に決まって一瞬、心が晴れたと思った。冷たい現実が迫ってくる。
早く話さないと。
新しい台本を渡される。まだ決まっていない役も何人かいるらしく製作発表はまだ来月の話らしい。
主要キャストが集められて、一番先に名前が呼ばれる。
「主人公七海晶役の、水原琴音さんです」
「よろしくお願いします」
拍手が沸き起こる。
この僕が……主人公。
朝の鬱屈した気持ちは吹き飛んで、ようやく実感が沸いてきた。
映画の主役なんだ。
自然に笑みがこぼれる。
遠くから倖太が見ている。彼も嬉しそうだ。
主人公の七海晶は、表向きは歌手、裏では暗殺者という難しい役だ。
小さな正義より、大きな善に従う。それが彼の生き方だ。
金や権力で守られた犯罪者や、人体実験、人身売買など、日本で表立って報道されない事件を解決かる組織に属している。
七海晶は大きな善のために、暗殺者になった。
この映画では、薬品の開発のため大勢の人間を殺す製薬会社を滅ぼす戦いが描かれる。
美しいダークヒーロー。
それが七海晶。
ターゲットは政治家の父と、新薬を開発した、実の兄。
『大きな善に従う』という七海晶の台詞が耳に痛い。
僕は兄を殺さないといけないのか。
芝居とはいえ辛いな。
「主役は君だ。降りるなんて言わないでくれよ」
「はい。精一杯やらせていただきます」
衣装合わせや台本読みなどスケジュールが決まっていく。
記者会見もある。
そんな中、鏡原と玉木が現れた。
「車の件ですが、確かに届けは出てました。白い車の方は、売りに出した記憶はありませんか」
「さあ……。母の車でしたから。帰ってもらえませんか、仕事中なんです」
「そうですね。もうひとついいですか」
「はい? なんでしょう」
「アヤさんが亡くなる前のお話を聞きたいんですが、水原一雄さんはどちらに?」
「父方の実家に帰っているはずですが」
連絡先を伝えると二人は帰っていった。
雪雲が胸の中に広がる。
主役に決まって一瞬、心が晴れたと思った。冷たい現実が迫ってくる。
早く話さないと。