セカンドデビュー【完】
雪はちらつく程度から、本格的に降り出してきた。

「母親の墓の前で、悪いことできるのかい」
「……あんたに何が解る」
「解らないから聞いてるんだよ。君は何を知っているの」
「僕は……」
「さあ帰ろう。君がここに留まるなら僕は本当に逮捕しなくちゃいけない」

バールを振り上げて逃げられないか?

「……やめなよ。君に人は殺せない」
「……どうかな」
「君は誰よりも地位や名誉を欲しているタイプの人間だ。自分の存在を知らしめたい、君はその欲望にきっと勝てない。有名人になりたいんだろう? 犯罪は割が合わない。
君が欲しいものは名誉のはずだ」

図星だ。
僕は急に力が抜けて笑い出した。



犯罪なんて、わりに合わない。




「帰りましょう。改めて話します。倖太に」
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