セカンドデビュー【完】
面会謝絶の札が出ている。
カーテンは閉ざされていて、中を窺い見ることはできない。

話したら、きっと僕は。
彼を失ってしまう。

考えるだけで、その寂しさに耐え切れそうも無い。


話そう。


でも。


話さないといけない。



ねえお母さん。
こんな結末は嫌だよ。

みんなが幸せになれる方法は本当に、ひとつもなかったのかな。


倖太が手首を切り、このまま死んでしまったら、僕は。
僕はひとりぼっちだ。


倖太を失うのは嫌だよ。

兄弟だと知らずに恋をした。
真実を知れば、きっと君は僕を見限るだろう。

母さんたちが立花美香を殺した罪を僕が引き受けるのか。
殺人なんて割に合わないよ。
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