セカンドデビュー【完】
「父さんと松本が駆けつけた時、もう美香さんは死んでたんだ」
「どうして病院に運ばなかったの」
「母さんが後を追おうとしてパニックを起こしていた。彼女をなだめるので精一杯だった」

3年前の10月、二人は話の途中でもめた。もみ合いになって、美香が倒れた。
頭を打ってそのまま、動かなくなり、アヤはパニックに陥った。
泣きながら電話をかけてきたアヤから場所を聞き出した。

「死んだのを父さんが見たわけじゃないんだね」
「そうだ」
「本当のことは、母さんしか知らない。そうだよね」
「そうだ」

「美香さんの死体を川に流したのは誰」
「彼女が辛いと言ったから」
「誰が流したのって聞いてるんだよ」

「母さんが」
「母さんが死体を捨てたのを見たの?」
「もう死体はなかったんだ。本当だ」

「彼女は美香さんしか見ていなかった。彼女の心を奪って話さなかった立花美香がやっといなくなったんだ」
「父さんは、嬉しかったの」
「そうだよ。そうだよ琴音! 母さんは父さんたちを愛してなかった、わかってただろう。やっと自分のものになると」
「本気で言ってるのか」

大変だ。
父さんは立花美香の死をチャンスととらえてしまったんだ。

「……頭を打ったなら、病院に運んだら助かったかもしれない。それを川に流すなんて!!」
「母さんが殺人犯になるのを見てられなかった!!」
「実際に死んでるじゃないか! 倖太は母親を殺されたんだ、どうするんだよ!」

「倖太はどうなる。母親が親友に殺されたなんて、とても僕の口から言えないよ」

愛してるのに。
可哀想な倖太。

「あの子には悪いことをしたと」
「母さんも父さんも松本も、知ってて黙ってたのか」

CDデビューが決まったと思ったら親が殺されて話が流れて、誰も倖太を助けてくれなかった。

たった一人で悲しみに耐えてきたのに。



なんて可哀想な倖太。



「両親が犯人だったなんて、僕は倖太になんて言ったらいいんだ」
「琴音、父さんと母さんは……。お前の親じゃない」
「……えっ」

どういうこと。

「お前を産んだのは美香さんだ」
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