セカンドデビュー【完】
雪道を歩きながら、ここが母さんの故郷なんだと、しみじみ思う。
凍りついた道を転ばないように気をつけて歩く。


どうして。

どうしてこんなことに。

「ラーメン食べようか」
「はい」

声を掛けられて我に返る。
近くの店に入り、醤油ラーメンを頼んだ。

「君が墓を暴こうとしたのを僕は止めた。捕まえても、君のためにならないと思ったからだ」
「……」
「お祖母さんにしても、もっと強く言えば白状すると思う。でもそれは、カガさんのポリシーに反する」
「ポリシー……?」
「『犯人にも事情がある』。甘いとは思うけど、ふんじばって捕まえたって、反省しないだろ」

注文した醤油ラーメンは、濃い味付けで美味しかった。
冷えた体が温まる。

「鏡原さんは……。いつも僕を信じてまかせてくれる。もちろん悪事を許すつもりはないし、水原家が犯した罪は、償うべきだと思う。殺人を隠そうとしたんだから」
「僕が償います」
「それは倖太くんに言わなきゃいけない。君が殺したわけじゃない。ただ、ひとつの罪を隠そうとしたことが事件を長引かせた。誰かが水原アヤを止めるべきだった。自首を勧めるべきだったんだ。今言っても仕方ないけど。そのせいで、お祖母さんまで苦しんでる」

「……食べ終わったら、戻りましょう。僕が話します」
「待とうって言ってるだろ。それに僕は君を信用してない」

追加で注文した唐揚げを、ぱくぱくと玉木は口に運んだ。

< 552 / 592 >

この作品をシェア

pagetop