セカンドデビュー【完】
「ああ、そうそう。指輪なら見つけたよ」

青森から戻った玉木が、琴音を連れて現れた。

「立花美香と水原アヤは、結婚するつもりだった。日本では無理だから、海外に逃げてね」
水原アヤの母親がすべて話してくれたよ、と、ビニール袋に入れられた指輪を二つ見せた。

「これは婚約指輪だ。二人はそれぞれ離婚して、渡米するつもりだった」

「検視の結果、被害者には頭部にぶつけた後があった。車の窓にぶつかったらしい、血痕もある。ただ致命傷じゃなかった。検視でやっと見つかったぐらいの小さな傷だ」


「たぶん、なにかの話で揉めたんだろう。その時に、頭を打って、気絶したか脳震盪を起こした。水原アヤは死んだと勘違いした」
「殴ったわけでも絞め殺したわけでもない。ナイフで刺したわけでもない。死因は溺死、立花美香が抵抗したあとは一切なかった」

「水原アヤは冷静な判断ができなくなったんだろう」と鏡原。
「あれは後追い自殺的な事故だったんだ。水原アヤには心中のつもりだったのかな。失敗したけどね」
「水原アヤは、後を追おうとして水に入った。その結果、意識のなかった被害者だけが死亡した」
「……そんな」
「最初から殺意があったわけじゃない。でも、結果として立花美香だけが死に、水原アヤだけが生き残った」
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