セカンドデビュー【完】
「車を処分できなかったのは、美香さんと最後に過ごした場所だからです。僕がガレージに隠そうと提案しました。後日、僕が運転して奥多摩まで運びました。僕は自分のためだけに、アヤさんに秘密にさせました」


どんな秘密でもいい、縛り付けたかった。
愛されていなくても。それでも。

「でもアヤさんの心は、美香さんが連れて行ってしまった。3年前に彼女は壊れてしまった」

「橘を……。事務所に引き取ったのは、罰して欲しかったんだと思います」

「あとから聞いたことですけど葬式の時、「母さんを守れなくて申し訳ない」と倖太は頭を下げたそうです。アヤさんは恐ろしかったと言ってました。自分の子供に罪を咎められたような気がして。言い出せなくなったと」
「……自首する時間はいくらでもあったはずだ」
「自分が捨てた子供でも、憎まれるのは辛かったんだと思います。勝手な言い分だとは思いますけど」

「これは僕の想像ですけど……。倖太はアヤさんによく似ています。一途で。優しくて……。アヤさんは倖太の中に美香さんを見ていたんだと思います。本当にすまないことをしたと思っています。アヤさんの代わりに謝ります」
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