セカンドデビュー【完】
「女同士では子供は作れない。だから作ったのよ。自分が産んだ子供を美香が育ててくれたら、親子になれる」
「……形だけじゃないですか」

「アヤにとっては形が大事だった。でも刑事さん。美香を引き止めるためだけとはいえ、自分のお腹の中に10ヶ月いた我が子に、自分のしたことを素直に話せると思いますか?」
「……わかりません。でも、その結果、何も言わないまま亡くなられたのが、正しいと思われますか?」
「秘密を墓場まで持って行きたかった気持ちは、私にはわかります。美香が死んだ時、私は正直アヤを疑いました。そんな自分がイヤになった。でも本人に聞くのが怖かった。彼女を失うと思ったから」
「どうして……話してくれる気になったんですか」

「倖太君に会ったからです。あの子は、アヤにも美香にも似ていました。私の親友に」

大道寺レナの目に、涙が浮かんだ。

「アヤは母親だと名乗りたくなかったんだと思います。でも、倖太くんを失うのは怖かったんだと思います」

動機がわかった。

水原アヤは、実の子である倖太に母親と名乗りたくなかった。
最愛の立花美香の頼みを断った。
倖太からの拒絶を恐れて。

「水原アヤは怖かっただけなんだ。殺意はなかった」
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