セカンドデビュー【完】
「……歌いたい」

琴音のために。
琴音のために、生きていきたい。



その答えが聞きたかったと、琴音の両腕がオレを包み込んだ。

「倖太はひとりじゃない。僕がいる」

ひとりぼっちだと思っていた。
違ったんだ、出会うために生まれてきたんだ。
取り替えられて育てられた。
一度壊れた家族を元に戻すことは、もうできない。



「いつだって君は僕を助けてくれた。今度は僕が倖太を助ける」
「お前にそんなこと言われるなんて」
「もう一度、やり直そう」

……そうか。
オレと琴音で始めればいいんだ。最初から。

二人で一緒に。

「母さんの罪は僕が償う。一生かけて償うから。さよならなんて言うな!」

ぎゅっと抱きしめられる。

琴音に涙は見せない。



もう、泣かない。

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