吸血姫に愛の形を
何だろう…
いつも通りに調理してるはずなのに…
何処か違和感がある。いや、何処かじゃなくて
そこに確かな違和感がある。
あれ…?いつもだったら
美味しそうな良い匂いがするはずなのに
美味しそうな匂いがしない。
いや、匂いはあるんだがこの料理からじゃない
違う所からしてくる…
だめだ、今は料理に集中しなきゃ!
冷めないうちに一騎君に御馳走しないと。
そして盛り付けに取り掛かる。
愛美
「ケチャップで何描こう…?」
ベタにハート?いやいやっ恥ずかしいし
[おいしい?]って文字にしちゃおうかなぁ
一騎
「できたか?」
愛美
「あっうん!もうちょっとだよ」
ええいっどうにでもなれぇえ!!!!
結局[おいしい?]の文字になった。
一騎
「美味そうな匂いだな…」
愛美
「さぁ召し上がれ―」
そう言って向かい合うようにして座る。
一騎
「いただきます」
彼女の心は不安で一杯だった。
調理中に味見をしたが、味が分からなかった。
何回か口の中を濯いでみて、口の中を綺麗にしても味は分からないままで
異物を食べてるようにしか感じなかった。
だから、美味しく出来たのか分からない。いつも通りに調理したから多分不味くはないと思うけど、
不安なものは不安だった。
彼女はその不安の中、ジーッと彼を凝視していた。
その視線を気にしつつも、彼は1口目を口の中へ運ぶ。
一騎
「ん…おいしい」
彼は少し照れくさそうだったけれど
正直な気持ちを言葉にし、
愛美
「そっか!良かったぁ~」
彼女は凄く嬉しそうに、その言葉に安心したように笑い
正直な気持ちを言葉にした。
素直に会話する2人。その雰囲気は柔らかだった。
モグモグと黙々と食べ進めていく、
半分程食べた所で彼が口を開く。
一騎
「愛美は食べないのか?」