吸血姫に愛の形を
愛美
「うん、お腹空いてなくて」
彼女は苦笑しながら言う。
この言葉は嘘だ。本当は彼が訪ねてきてから、
目が覚めて良い匂いを感じた時から徐々にお腹が空いてきていた。
一騎
「バカ、無理すんな。また風邪ぶり返したらどうすんだ。」
愛美
「そうだね…気をつける…」
怒られた事で落ち込む彼女を見て彼は小さく溜息を吐く。
そして彼女の隣へ移動し、額に手を当てて熱を測る。
一騎
「熱は。。。ないみたいだな」
愛美
「う、んっ…」
━ドクリッ・・・━
心臓が大きく跳ねた。そんな気がした…
彼が近くにくると、食欲をそそる匂いがする。
目が覚めた時から感じていた匂いが隣からしている分かる。
その匂いが彼からしているのが分かると、
彼女は自分の額にある彼の手を取る。
愛美
「一騎君、ごめんね」
そう言って、
彼の親指の付け根辺りに、力一杯噛みつく。
一騎
「痛っ―!?」
噛みついた所から血が溢れている。
その血を味わうように舐めとっていく。
愛美
「ハァ・・・!」
彼女の口に広がるのは、この世の何よりも美味しいと思わせる程の味。
そして頭が真っ白になり何も考えられなくなる程の快感が押し寄せた。
無我夢中に血を舐める。だが溢れてくる血だけでは足りずに、傷口に口を当てて吸いついた。
一方、彼はこの状況が理解できず痛みを感じ驚くばかり。
目の前の彼女が、自分の手に噛みついたかと思うと傷口から溢れ出た血を舐めているなんて…非日常的な体験だった。
噛まれた時に何も抵抗しなかったのは、何故なのか自分でもわからない。
ただ、その状況を受け入れようと彼女を見ていた。
愛美
「・・・もット欲シい・・・頂ダ、イ。一騎君の」
彼女の体は火照り薄紅色に色付いていき、
眼は見惚れているようにトロンとしていた。
彼の理性が揺れる。人の血を飲む行為など、《普通》に考えるとおかしいはずだが、
そんな顔をされては断れない。《普通》に考える事など忘れて、彼女の要求に答える。
一騎
「あぁ、やるよ。好きなだけな・・・」
そう言って彼女を優しく抱き締める。