君色キャンバス
鈍色
次の日の天気は、昨日と同じ雨。
ザァザァと降りしきる音が、屋根裏部屋に響く。
天窓の表面を雨水が伝い、そこから見える景色 全てを歪ませていた。
紗波は一階に下りると、いつも通りの早い朝を過ごす。
食パンを食べ、制服を着て、靴を履いて、外に出る。
扉を開けた途端、梅雨 独特の湿気と、盛大な雨水が跳ねる音が、玄関に飛び込んだ。
雨音を聞きつつ、傘立てに手を伸ばす。
傘立てに入っている傘は、透明なビニール傘 一本で、およそ生活感が無い。
水溜りの上を歩くと、白いスニーカーが少し土色に染まり、アスファルトが黒く変色していた。
ビニール傘から覗くのは、灰色の空。
学校までの道を、ゆっくりと歩いて行く。
道端に咲く青い小さな花は雨に濡れ、その花を上から包む、少し虫にかじられた、大きな葉を眺める。
ポタポタと、葉の先から溜まった水が零れ落ち、水溜りに波紋を作った。
紗波は、傘の骨から雨水の滴る音を聞きながら、学校へと向かう。