君色キャンバス
小百合が、声にならない声を漏らすが、クラスメイト達はその声に気づかずに、ジッと転校生を好奇の視線で見つめている。
その転校生は、皆の前に堂々と立っている。
茶色い髪はクルクルと巻かれており、お嬢様然とした雰囲気が漂う。
化粧をしているのか、ほんのりと頬が赤く、少し派手目な印象だ。
幼いとも世間知らずともとれそうな笑顔を浮かべて、クラスメイト達の顔を見回している。
藤村が黒板に、白いチョークで転校生の名前を書く。
「植原、自己紹介しろ」
「はいっ!」
少し鼻にかかった高い声で、その転校生は自己紹介を始めた。
紗波は一度も顔を上げない。
小百合の顔は青い。
「初めまして!アタシは、植原 光と言います!最初は馴染めないかもしれないけど、仲良くして下さい!」
植原 光(ウエハラ ヒカル)、とその転校生は言った。
その名前を聞いた途端__紗波の、止まる事の無かった鉛筆が、ピタリと動きを止めた。
ゆっくりと顔を上げる。
紗波の方に目を向けた転校生__光の瞳が、なぜか怪しく光った。