君色キャンバス
「…あれ?もしかして__」
光が、シンと静まる教室の中で、一人 声を発する。
今まで、表情一つ変えなかった紗波の顔色が、気の所為か、少し青白く見える。
その転校生は、獣が標的を狙うような瞳で、紗波を見つめた。
そして、ニヤリと__笑顔を浮かべた。
「もしかして__あの、天才の久岡さんかな?」
その言葉を聞いた刹那、紗波の身体がビクリと震えた。
小百合がやっと、声を出した。
「光…?なん、で、ここ…に…?」
「ん?まさかお前ら、知り合いか?」
藤村が陽気な声で問いかけた。
「ええ、知り合いです!」
光がそう言って、紗波の方を真っ直ぐに見つめ、笑いかけた。
「ねぇ、天才ちゃん!」
紗波の身体が、一層 強く震えた。
そして、紗波の口が開いた。
「…う…じゃ…ない…」
その声は、いつもの淡々とした冷たい声とは違い__弱々しい。
「なんて?天才ちゃん!」
紗波が震える唇を、動かす。
「ちが、う…私は…天才じゃ、ないっ!!!」
「紗波!」
小百合が叫んだ。
藤村や他の生徒たちは、三人のやりとりと普段の紗波との変わりように、唖然としている。
「天才ちゃん!!!!」
光がニヤニヤと笑いながら、紗波にもう一度 呼びかけた。
「違う!天才じゃない!天才じゃ…ない!」
「紗波!落ち着い__」
小百合が立ち上がる。