君色キャンバス






「アハハハハッ!久岡 最高!!」



教室の中は静まり返り、光の明るい笑い声だけが響いていた。



小百合が下唇をグッと噛み、光の方に向き合う。



そして、青ざめた、信じられないような顔のまま、光に言った。



「…なんで?なんで光が…」



「おい、河下…?」



藤村が、太い眉を顰めながら、小百合と光を交互に眺める。



誰も紗波を追いかけようとしない。



小百合も、足が動かなかった。



(…なんで?なんで光がここに居るの?なんで?転校生が…光?)



身体がフルフルと揺れる。



「河下…植原と知り合いか?」



「やだ、先生!アタシと久岡と小百合、同じ中学なんですよ?」



光がにこやかにそう言い、藤村が怪訝そうに小百合を見つめる。



「そうなのか?」



小百合は何も答えず、ジッと黒い瞳で、光を睨んでいた。



光が口角を上げる。



「知り合いか?なんで久岡は出て行ったんだ?」



藤村がサッパリ訳が解らない、というように太い首を傾げた。



「…まぁ、いっつも久岡はサボってるしな。居ても居なくても変わらないか。とりあえず植原は__久岡の席につけ」



小百合の身体も、ビクリと震えた。



光は軟らかい笑顔を浮かべながら、悠々と紗波の席に向かうと、ストンと腰を下ろした。



小百合はゆっくりと椅子に座り、光の後ろ姿を見つめた。



__その時。



< 107 / 274 >

この作品をシェア

pagetop