君色キャンバス
「おいっ!なんかあったのか!?」
ガラガラッ!
大きな音を立てて、教室の前の扉が開き、三十二人の目は扉の方に向いた。
小百合も、驚いて扉の方を向き__自分の息を呑む音が聞こえた。
藤村が目を見開いて扉を見るのが、視界の端に見える。
「…な、流岡…」
誰かが、ポツンと呟いた。
扉の外側に居たのは、祐輝だった。
なぜか、茶色い瞳が左右に揺れ動き、少しだけ息が乱れている。
雨の音は、弱まっては、また強くなるのを何度も繰り返しながら、暗い雰囲気を見事に醸し出していた。
「…流岡?なんでここに居るんだ?さっさと教室に戻れ!」
呆然と教台で立ち尽くしていた藤村が、やっと状況を理解し、祐輝に向かって叫んだ。
卯花高校では、授業は選ばせない方式をとっているため、この時間、ここに居るという事は、授業をサボっているという事になる。
藤村の、一瞬 間の抜けた顔が、みるみると赤くなっていく。