君色キャンバス
「だから、何があったか聞いてんだよ!さっさと答えろ!」
祐輝が扉に手をかけたまま、藤村に向かって大きく問い詰める。
小百合や、他のクラスメイト達は、様子をぼんやりと見ているしかない。
「今、久岡が飛び出して行ったろ?なんかあったんだろ?何があったんだよ!」
「な、何もない!さっさと教室に戻れ!サボり魔が!」
祐輝がイライラと足を床に叩きつけながら、教室の中を見回している。
そして、一度、光の方を向く。
小百合も、その祐輝の視線につられて、光の方を見た。
光が、明るい微笑をたたえながら、祐輝を見つめているのが見えた。
「お前 誰だよ?そこ、久岡の席だろ?」
祐輝の、不機嫌そうな顔が、まっすぐに光の方を向いている。
光は祐輝の突き刺しそうな視線に動じず、ニコリと微笑み返す。
「あっ、こんにちは!私は、植原 光って言います!今日、転校してきました!空いてる席はここだけだったので、ここに座らせてもらってます!」
祐輝の眉間に、若さに似合わないシワができたのを、小百合は垣間 見た。
「おいっ、流岡!いい加減にしろ!」
藤村がもう一度 叫ぶが、祐輝はピクリとも反応せず、再び教室の中を見回している。
そして、小百合に目を止めた。
「…河下、何があった?」
小百合が立ち上がった。