君色キャンバス



虐待をされていた事。



両親が離婚している事。



感情が無い事。



『天才』という言葉が、トラウマの事。



「へぇ…なるほど…ねっ!」



言い終わった瞬間、光は豹変し、小百合を蹴り飛ばした。



「っあ!…え?ひか、る…?」



「あんた、バッカじゃないの?」



光が薄ら笑いを浮かべ、屋上の床に寝転んだ小百合を見下す。



その瞳は冷たく。



「アタシが久岡の事 助けたい訳ないじゃない。そのくらい、考えれば?」



光が屋上から出て行き、小百合は一人、屋上に取り残される。



痛みに暫らく堪え、十分ほどうずくまっていると、幾らかは和らいだ。






バンバンと音を鳴らしながら、急いで階段を駆け下りると__階段の目と鼻の先にある美術室の前に、人だかりが出来ている。



その人だかりの中心に居たのは、光。



「おーい、天才さーん!出てきてよー」



酷薄に微笑んで、中で震えているであろう紗波に、呼びかけている。



周りの女の子たちも、それを楽しんでいるようだ。






その日から、今の何十倍も酷い、紗波へのイジメが始まった。






< 130 / 274 >

この作品をシェア

pagetop