君色キャンバス
虐待をされていた事。
両親が離婚している事。
感情が無い事。
『天才』という言葉が、トラウマの事。
「へぇ…なるほど…ねっ!」
言い終わった瞬間、光は豹変し、小百合を蹴り飛ばした。
「っあ!…え?ひか、る…?」
「あんた、バッカじゃないの?」
光が薄ら笑いを浮かべ、屋上の床に寝転んだ小百合を見下す。
その瞳は冷たく。
「アタシが久岡の事 助けたい訳ないじゃない。そのくらい、考えれば?」
光が屋上から出て行き、小百合は一人、屋上に取り残される。
痛みに暫らく堪え、十分ほどうずくまっていると、幾らかは和らいだ。
バンバンと音を鳴らしながら、急いで階段を駆け下りると__階段の目と鼻の先にある美術室の前に、人だかりが出来ている。
その人だかりの中心に居たのは、光。
「おーい、天才さーん!出てきてよー」
酷薄に微笑んで、中で震えているであろう紗波に、呼びかけている。
周りの女の子たちも、それを楽しんでいるようだ。
その日から、今の何十倍も酷い、紗波へのイジメが始まった。