君色キャンバス
「家で絵を描いては…すぐに塗り潰す。そんな毎日だったみたい。不登校になったのは、中二の二学期くらい。…で、卒業式にだけ、紗波を促して、一緒に行った。そして、テストを受けて…」
雨の音が、教室と共鳴する。
「紗波は、とっくに大学生の勉強も教え込まれてた…暴力と一緒に勉強をしたから、痛みで全部 覚えてるみたいで…不登校にも関わらず、難しいテストは満点。高校は、担任が推薦して、無理やり入れてくれた。私の志望校でもあった…」
顔を伏せる両腕の間から、何か光る物が机に落ちたのが見えた。
「…やっと、平穏な日々を過ごせる。そう思ってたんじゃないかな…この一年間は」
「…そこに」
「そう。…偶然にも」
腕で涙を拭い、キッと祐輝を睨みつけるように、小百合は前を向いて言った。
「この高校に、光が転校してきた」
__重苦しい沈黙が続き、小百合は再び顔を伏せ、祐輝は空き教室の、何も無い虚空を見つめた。