君色キャンバス
紗波を襲った、不幸の連続。
母親からの虐待。
両親の離婚。
執拗で、酷いイジメ。
祐輝は暫らく、この世にこんな人間が居る物なんだ、と、そんな事を考えていた。
顔を伏せた状態で、時々 小百合はチラリと濡れた目で、祐輝を見てきた。
その瞳ははっきりと、『紗波を助けてくれるの?』、そう言っていた。
「…なぁ」
重く暗い雰囲気を破るように、祐輝が小百合に問いかける。
「…なに?」
震えた涙声で、小百合は祐輝の問いかけに変事をする。
「…久岡の感情が無くなったのは、虐待されて、母親と離れて、天才ってイジメられたからだ、って事だよな?」
「…私が思うには、だけど」
小百合の話を聞いていくうち、なにか違和感を祐輝は感じた。
違和感、というよりは、心に引っ掛かった、と言う方が正しい気もする。
「多分…久岡の感情が無いのは、その理解だけじゃねえと思う…あと一つ、久岡に…感情が無い理由がある気がする」
紗波の闇は、あと一つ。
祐輝は、直感でその事を感じた。
「…もう一つの理由…?」
小さい声の呟きが聞こえる。
「あぁ。何と無くだけどな…それだけじゃない気がするんだよ」