君色キャンバス
焦茶色
放課後、卯花高校の今日最後の鐘が鳴り響く校舎内を、祐輝は腕を組んで歩いている。
頭の中は、紗波でいっぱいだ。
(虐待、なぁ…久岡って、んな酷い過去があったんだな…俺、無神経 過ぎたかもしれねー。…それに)
五限目が始まる頃に雨は止み、灰色の雲の隙間からは、夕焼け色の空が姿を覗かせている。
(どうやって、久岡を助ければ良い?)
祐輝がうーん、と唸る。
絶対に紗波を助けたい、とは思ったものの、得策などは思いついていなかった。
『助けたい』その感情だけで、祐輝は小百合に言ったのだ。
校庭の所々に日が当たって、茶色い水溜りの海がオレンジ色に光っているのを、祐輝は四階への階段を上がりながら見た。
昼間までの豪雨とは違って、穏やかな灰色の空だ。
踊り場に出ると、階段の上から、女子独特の高い声が聞こえる。
大方 恋話でもしているらしい、と思うと、祐輝は行き辛さを感じながら階段を上がった。
身体が四階に近づくにつれ、話し声は大きくなっていく。
(…うるせえな)
甲高い声が階段に響く。
さっさと階段から離れよう、と階段を登り切り話し声のする方を横目に見た時。
「…あ?」
そこに居たのは、数人の女子と、その中心部に居る光だった。
思わず光を見ると、不意に目が合った。