君色キャンバス
「どけ。俺が用事あんのはてめえ等じゃねえんだよ、ブス共が」
窓から差す茜色の日が、光の顔を赤く染め上げている。
睨み殺すかのように祐輝を見つめ、小馬鹿にしたように笑う。
「用事って、久岡の所ー?美術室に居るんだよね、やっぱ付き合ってるの?」
「付き合ってる訳ねえだろうが。ぶっ殺されてーのか」
「酷い!殺されたい訳ないしー。あんた馬鹿なんだ?ねぇ、久岡に『天才』って言ってあげてよ。彼氏に言われたら、きっと嬉しがると思うよー!」
殴りたい衝動に駆られるのを必死に堪え、祐輝は女子の間を通る。
「クソ共が」
尻目に見ると、光がニヤッと笑ったのが見えた。
「久岡ってさー、天才だから、褒めてあげてねー?」
邪悪な笑い声を聞きながら、祐輝は聞こえないフリをして、廊下を歩く。
光の笑い声が、やけに余韻を残して、祐輝の耳に残った。