君色キャンバス
祐輝の目を見つめた時、その茶色い瞳は揺れておらず、信じても良いような気がしたのを思い出す。
(…紗波が好きだって言った時も、真剣に言ってるように感じた)
リンリン、と音を立てて、自転車が小百合をあっという間に追い越して行った。
せわしいスピードで、自転車はどんどん小百合から離れていく。
(…信じても、良いのかな…?)
ふっと、道の端に植えられた銀杏の並木に目を向けた。
緑色の扇子のような葉のついた幹が、雨に濡れて焦茶色に光っている。
(…信じても)
小百合は足を止め、ぼんやりとその並木を眺めながら、心の中で呟いた。
(信じても、大丈夫だよね)
自身の直感を信じて、小百合は少しだけ微笑むと、また、歩きだした。
小さな雲の塊が、東へと向かっている。